表面的なKPIに踊らされてない?サービス価値を高める明晰指標の見定め方

シード投資にフォーカスしたベンチャーキャピタル「First Round」。ここのインタビュー記事が勉強になりすぎる。

とっても大事なことが書かれた “I’m Sorry, But Those Are Vanity Metrics“と題された記事を一部紹介します。語り手は、データ解析企業「Looker」の創業者でCTOのLloyd Tabbさん。

混乱させたくない「虚栄指標」と「明晰指標」

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デイリーアクティブユーザーや売り上げ増など、達成するとスタートアップが声だかに叫ぶ指標たち。ロイドさんは、こうした指標が “虚栄” 指標であると指摘しています。

虚栄指標にも役割はあって、例えば投資家から資金調達したり、競合企業を比較したりするのには使える。つまり、「他者による会社や事業の評価」に有効。でも、サービスの改善や強化には繋がらない。

だから、虚栄指標を社内のKPIに設定してしまうのはNG。本来、追いかけるべきは “Clarity metrics”(明晰指標)。2つの定義は、以下のとおり。

  • Vanity metrics(虚栄指標)
    • 表面的な指標。頻繁に大きな数字、他者をあっと驚かすようなダウンロード数など。支持者を増やし、取引先との契約を結ぶために活用できる。
  • Clarity metrics(明晰指標)
    • 運用にかかわる指標。プロダクトは1日何分間使われているのか、ユーザが目的達成までにかかる時間などが含まれる。こうした指標こそ、サービスや事業をさらに成長させる燃料になる。競合優位性を強固なものにするために活用できる。

 

この2つの指標を混乱させてしまうと、ビジネス戦略を間違えて大惨事に。2014年、Facebookを活用したとある採用プラットフォームが人気を集めた。DAU(デイリー・アクティブ・ユーザ)を増やすことだけに注力し続けた結果、2年以内に3,300万DAUを突破。無事に4,900万ドルの資金調達にも成功した。

ところが、DAUというたったひとつの指標に固執してしまったばかりに、増えるのと同じ勢いでユーザを失っていることに気がつかなかった…。きらびやかな指標にばかり目を奪われてサービス改善を怠ったため、サービスへの憤りを感じて離れていくユーザが少なくなく、結局サービス自体ポシャってしまったんだそう。

サービス業者にとっての明晰指標

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企業によって、またその事業内容によってその明晰指標はさまざま。サービス業者なら、陥りやすい虚栄指標はサービスの利用者数。利用者数の増加率がわかったところで、競合との比較には使えても、「なぜ?」「どうやって?」といった肝心な質問の答えにはならない。サービス業者がフォーカスすべきは、ずばり顧客満足度。

例えば、Uberのような配車サービスの場合、一般的に月間アクティブユーザ数が指標にされる。でもこれは虚栄指標。なぜなら、顧客がリピートしている理由、またはサービスを改善すべきポイントを見定めるために役立たないから。

サービスを改善するために必要な指標は、例えば、迎えの車が到着するまでの時間かもしれない。1分待つのと10分待つのとでは、サービスの品質が明確に表れる。待ち時間が短ければ短いほど、ユーザがリピートする可能性は高まるはず。

その他にも、ユーザの利用データを解析することで「許容される待ち時間」を割り出してみるとか。運転手、目的地までの距離といった横軸が、待ち時間の長さにどう影響しているのか。これを調べることが、顧客満足度を高めリピート顧客の獲得に繋がるかもしれない。

ソフトウェア企業にとっての明晰指標

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ソフトウェアやアプリに関しては、ダウンロード数ほど意味のない数字はない。スマホにダウンロードしたのはいいものの、ほとんど開いていないアプリがどれほど多いことか。ソフトウェアは、表面的なダウンロード数ではなくアクティブエンゲージメントを明晰指標に定めるべき。

アクティブエンゲージメントを高めるためにできることのひとつが、「ユーザが製品を使うことを阻んでいる要因」を特定すること。特に、以下の2つ。

  • Failure rates(失敗の割合)
    • 顧客に対して約束していることを満たせなかった回数。組織としてこの数字を割り出すには、部門ごとにそれを特定すること。カスタマーサポートなら「顧客の課題を解決できなかった回数」だし、仕入れなら「顧客が購入しようとした商品が在庫切れだった回数」かもしれない。各部門、各役割ごとにこれを掲げるべき。製品に変更を加える都度、この数値は調整される必要がある。
  • Poison rates(毒性の割合)
    • 初回利用時の体験がひどすぎて、二度と戻らない顧客の割合。この数値を測っている企業は稀なものの、ユーザベースを大きく伸ばそうというときに大きなヒントになる。なぜなら、これは見込み顧客を失うだけにとどまらず、彼らがサービスをすすめたかもしれないその周辺顧客を失うことを意味するから。SNSの時代では、毒性はあっという間に伝染する。

 

Poison ratesの具体例として挙げられているのが、Airbnb。「サイズ良し、立地良し、値段良し」と三高揃った良さげな物件に、実は毒性があるかもしれない。ここに一度泊まった利用者が、以降2度とAirbnbを利用していないとすれば?宿泊施設ごとの宿泊回数といった表面的な指標を追いかけていては、小さいながらも猛威をふるう毒性を見逃してしまう。普段からエンゲージメントに着目することで、こうした異常に気がつくことができるはず。

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少なくとも技術的にはデータをいくらでも集められる時代になって、簡単に集められてしまうからこそ、わかりやすい表面的な指標に惑わされてしまうのかもしれない。でも、テクノロジーがあくまでツールであるように、データはどこまでもデータでしかない。そこに「解釈」が加わって、初めて価値が生まれる。

Lookerの具体的なサービス内容は知らないのだけれど、こういう包括的なデータ解析サービスが普及していくことで、データ解析が一部の人のためのものじゃなくなっていくのだろうね。ロイドさん自身も、最初はとまどったGoogle検索を今では誰もが使いこなしているように、データ解析が誰にとっても身近になる日が来るだろうと予測しております。

んじゃ、今日はここまで。


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