冒険をしないという経営戦略ーー家で試着できるメガネ「Warby Parker」の視力検査アプリ

2010年に創業された、自宅で試着できるメガネショップ「Warby Parker(ワービーパーカー)」。立ち上げ当初はECサイトのみだったけれど、その後、ショッピングモールのカート販売でリアルに進出、今では全米で60店舗ほどを展開してる。

Warby Pakerの視力検査アプリ

リーズナブルな価格、メガネをひとつ購入するとひとつが寄付される “Buy a pair, give a pair“という社会貢献の要素などがファンを魅了。また、試着してから買うのが当たり前だったメガネをオンラインに持ち込むことで、メガネ業界をディスラプト(破壊)した。

とはいえ、そんなWarby Parkerも、視力検査ばかりは店舗で受ける必要があった。

と思ったら、この不便が近い将来解消される模様。試験運用中だという視力検査アプリiTunes)を使うと、スマホとPCを使って約20分で視力検査ができちゃう。眼科医のチェックを経て、最終的な検査結果が出る仕組み。

視力検査がオンラインで済めば、ボトルネックが解消されて、いくらでもメガネを衝動買いできてしまう(!)。今のところ、視力検査アプリを使えるのは、カリフォルニア・フロリダ・ニューヨーク・バージニアの18〜40歳までのWarby Parker既存顧客に限られるそう。

なんでメガネってこんなに高いの?

壊れたメガネをテープで止めて何年も使い続けていた後の共同創業者が、「なんでメガネってこんなに高いの?」と疑問を抱いたことがきっかけで誕生したWarby Parker。

長い間、メガネが高額なラグジュアリー商品だった理由は、世界最大手のメガネメーカー「Luxottica」(ルックスオティカ)が市場を牛耳っていたから。一人勝ちの市場で、値付けは思いのままだった。

Warby Parkerの立ち上げ当時まだ学生だった創業メンバーは、メガネ業界で完全なるアウトサイダーだった。だからこそ、固定観念や古くからの慣習にとらわれることなく、長らく変化がなかった業界で大きな変革が起こせたのかもしれない。

でね、今読んでいる本に偶然にもWarby Parkerの創業チームが登場するのです。「とりあえず色んな会議に取り入れたい、成功するアイディアの見極め方が高まる6分エクササイズ」という記事でも紹介した、アダム グラントさんの「ORIGINALS 誰もが「人と違うこと」ができる時代」という本。

創業チームは、著名ビジネススクール「ペンシルベニア大学ウォートン校」でアダム グラントさんの教え子だったそう。本の中で、著者はちょっと意外?!な Waryby Parkerの成功要因を明かしてる。

“片足だけ突っ込んだ” 奴には投資せん

教え子だったWarby Parker 共同創業者 Neil Blumenthalさんに出資話を持ちかけられたとき、グラントさんの答えは「 NO」だった。2017年に2.5億ドル以上の売り上げが見込まれる今となっては、何とももったいない投資判断だったわけだけど、当時の彼は迷わなかった。

なぜ、出資しなかったのか。ひとつは、Warby Parkerのアイディアを聞いた大半の人と同じ「メガネは試着して買うものだろう」という固定観念だった。ネットで売れるわけがない、と。でも、それ以上に彼の中で警報を鳴らしたのは、創業者の“片足だけ突っ込んだ” 起業スタイルだった。

Warby Parkerがリリースされる半年前のタイミングで、創業チームはまだ学生だった。勉強をする傍ら、空き時間で事業に取り組んでいたそう。まとまった時間ができる夏休みは事業に専念するのかと思いきや、コンサルやベンチャーキャピタルでインターンシップに参加する始末。

さらに、Warby Parkerが失敗した場合のバックアッププランとして、大学卒業後にはフルタイムの仕事の内定を快諾していたんだとか。そんな中途半端で事業が上手くいくはずがない!という理由が、著者が事業に出資しなかった最大の理由だった。

「冒険をしない」という経営戦略

自分たちのアイディアを心底信じて疑わないのなら、大学を中退してでも起業に専念するべき。背水の陣で臨まずに事業が上手くいくはずがない。恐れずに大きな賭けに出よ。

起業して成功するためには、こうした思い切った姿勢や選択が必要だと思われがち。でも、著者は、実はこれがとんだ誤解だということを発見した。Warby Parkerの創業チームがとった “play it safe”(冒険をしない)なやり方こそ、彼らが成功した理由だと。

これを裏付けるのが、1994〜2008年までに5000人以上の起業家(20代〜50代)を対象に実施された調査(経営研究の専門家Joseph Raffiee と Jie Fengによる)。比較対象となったのは、

  • 日中の仕事や事業以外の収入源がある起業家
  • 起業して事業に専念した起業家

 

という2つのグループ。考えるまでもなく、リスクを冒してすべてを注ぎ込んだ後者の起業家のほうが成功するのかと思いきや、結果は逆。実は、日中は別の仕事をしながら副業的に起業した起業家のほうが、失敗する確率が33%低いことがわかった。

事業成功の鍵を握るのは、リスクを冒して橋から飛び降りることではなく、むしろリスク軽減を徹底することにある。Warby Parkerの創業チームは常にこれを優先して意思決定をしていて、それは通常ひとりに絞るべきだとされるCEOが彼らには2人いる(”Co-CEO”)ことにも表れている。

ORIGINALS 誰もが「人と違うこと」ができる時代」は、一言でいうと”意外性が詰まった” 一冊。Warby Parkerの話もそうだし、例えば、TO DOを先延ばしにすることがすすめられていたりね。気になる気になる!という方は、ぜひ読んでみてくださいな。




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