生産性はクリエイティビティの敵、仕事やアイディア出しを”計画的に” 先延ばしにせよ

それが仕事でも宿題でも、To Doはさっさと終わらせてしまったほうがいい。子どもの頃から「宿題を早くに終わらせるように」と促されることで気づかぬうちに染み付いた習慣。

たしかに生産性という側面からみると、早めに片付けることが効率的だというのはわかる。でも、その”さっさと片付ける”やり方は、私たちがクリエイティブになるチャンスを奪ってしまっているのかも。

先延ばしってそんなに悪いこと?!

「宿題は終わらせたの?」「早くやっちゃいなさい。やっちゃってから遊んだほうが気にしなくていいんだから」と、誰もが親に催促されたことがあるはず。こうして、小さい頃からTo Doはさっさと終わらせてしまうのが正解ね!と思うようになる。

わたしなら、コラムの原稿を期日ギリギリまで待たずに終わらせてしまうことで、やらなきゃやらなきゃという頭の中の声から解放されて自由になれる。これはビジネスにおいても同じで、製品やサービスをいち早く市場に出す「先行者利益」が一般的に良しとされる。

でもね、「冒険をしないという経営戦略ー家で試着できるメガネ「Warby Parker」の視力検査アプリ」でも紹介したアダム・グラントさん(「ORIGINALS 誰もが「人と違うこと」ができる時代」)によると、なんでも生産的に片付けてしまうことにはネガティブな側面もあるんだそうです。

先延ばしにすることの効果を実験してみた

image via. Flickr

「先延ばしにすること」と「クリエイティビティ」になんらか関係性があるのではないか?!というアイディアを持ちかけてきたのは、グラントさんの生徒だったそう。

そこで、それを検証するためにある実験を実施した。学生を2つのグループに分けて、それぞれにビジネスアイディアを練ってもらう。お題は、「大学キャンパス内のコンビニ跡地をどう活用するべきか」。

グループの分け方はこうだった。

  1. すぐにアイディア出しに取り掛かってもらう
  2. 課題を出した後、ソリテアゲームなどゲームを遊んでからアイディア出ししてもらう

 

すると、すぐにアイディアを出し始めたグループ1の提案は、どれも想像の範疇にとどまるものばかりだった(例:また違うタイプのコンビニを建てる)。いっぽう、少し間を開けてから取り組んだグループ2は、より斬新なアイディアを提案した(例:家庭教師センターを設ける)。

グループ1とグループ2が出した事業の最終案は、どの案がどっちのグループのものかを知らされずに部外者が評価した。結果、ゲームを遊んで先延ばしにした生徒たちのほうが、すぐにアイディアを出し始めた生徒に比べてクリエイティビティが28%高いことがわかったそう。

でも待てよ、「ゲームを遊ぶ」という行為が生徒をよりクリエイティブにしている可能性があるかもしれないぞと考え、その可能性を除外するために作業の流れを以下のように変更。

[課題出し→ゲーム→提案] を [ゲーム→課題出し→提案]

その上で同じ実験を実施したところ、後者の順番ではクリエイティビティは発揮されなかった。つまり、課題が頭にある状態で先延ばしにすることが大切だということがわかった。企業でも学生に対してやったのと同様の実験を試みたところ、結果は同じだったそう。

歴史上の偉人も先延ばしが得意だった

例えば、クライアントに対してプロモーション案を提案するとき。それにすぐに着手してしまうと、真っ先に思いついたアイディアに飛びついてしまう。いっぽう、頭の片隅にその宿題がある状態で一定期間先延ばしにすると、より多角的にアプローチすることができる

先延ばしにする習慣は、歴史上の偉人にも見られたのだとか。例えば、レオナルド・ダビンチ。1503年から描き始めたモナリザは、描いたり放置したりを繰り返し、1519年の死に際になってやっと完成された。”I have a dream”で知られる有名な演説を行ったマーチン・ルーサー・キング・ジュニアも、公衆の前に立つ直前までスピーチを書いていたんだとか。

先延ばしにすることは、やらなくてはいけないことを意図的に遅延させることを意味する。そのタスクについて頭では考えていても、実際に進捗させたり終わらせようとはしない。タスクを後回しにすることで、人はひとつのアイディアに着地せず、独創的で幅広い案を模索できる。結果、真っ先に思いついた案より斬新なアイディアが生まれる。

やらなきゃいけないことを先延ばしにするまた別の利点は、即興できること。前もって準備や計画をしてしまうと、用意した形に固執してしまうことが多い。後からもっと面白いアイディアが出てきても、だいぶ前に決めてしまっているため、それを覆すハードルが上がっているというわけ。

大事なのは “計画的” な先延ばし

じゃあ、なんでも先延ばしにしちゃえ!という話ではなくて、クリエイティビティを高めるためにはそれが “計画的” な先延ばしであることが大前提。頭のなかにそのテーマを置いておいたまま、こうかな?ああかな?と時間をかけて転がすこと。

わたしの原稿の例なら、次のテーマをまず考える。考えたら、それをしばらく放置する。シャワーを浴びていていい案が思い浮かんだり、Twitterのタイムラインに役に立つ情報が見つかるかもしれない。そうやって、だんだんとたねをじっくりこねていく。

そう、例えば、しおたんのこんな感じのこと。他のことをやりながらもずっと頭の片隅で考え続けていたからこそ、閃きの瞬間が訪れる。しおたん、おめでとう。

「計画的な先延ばしのすすめ」を教えてくれたアダム グラントさんの著書「ORIGINALS 誰もが「人と違うこと」ができる時代」。実は、この本を書いている最中に先延ばしとクリエイティビティの関係性について発見したんだとか。

で、自分でも先延ばしにすることの効果を体験するために、先延ばしにすることの章を先延ばしにすることにしたんだそう(笑)。彼は、先回りして終わらせる性格なため、これはなんとも辛い試練だった。でも、何ヶ月も筆を取らずにいた結果、執筆を再開したときには新しいアイディアで満ち溢れていたそうよ。



*記事へのご意見・ご感想は、ツイッター @yukari77 または フェイスブックまでどうぞ。

メールアドレスが公開されることはありません。