スタートアップ失敗要因No.1は資金切れ、無料サービスでスケールするより1日目から稼ぐべき

CB Insights:スタートアップが失敗する理由

人は失敗から大したことを学ばない」と言ったのは、PayPalの共同創業者でベンチャーキャピタリストのピーター・ティール(Peter Thiel)だった。スタートアップが失敗する要因は同時に複数あるため、そこから学ぶことは難しいと。

参照:Deliciousさん、今度こそサヨナラ:Yahooに始まる5度の買収、長きにわたる大惨事から学ぶ

でも、個別の要因を特定し、最も多い要因に目星をつけることならできるはず。ということで、CB Insights が起業家が振り返る “複数の要因 をまとめてる。今回は、失敗の要因として2番目に多く挙げられた “Ran out of cash”(資金切れ)について書いてみたよ。

ソーシャルニュースリーダー「Flud」の場合

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レポートに登場する、2010年創業(FlipboardやPulseと同時期)のソーシャルニュースリーダー「Flud」は、まさにこの資金切れが原因で立ち行かなくなったスタートアップのひとつ。その要因については、TechCrunchの記事が詳しい。

2,000万ドルを調達した初期段階、Fludのニュースリーダーは消費者向けだった。ところが、無料サービスだったため儲けはなく、銀行の残高は減っていくばかり。2012年3月頃、メディアでは「Fludが最大800万ドルを調達か?!」という憶測が飛び交ったけれど、結局どことも話がつかず実現せず。

そこで自力で稼ごうと、Fludを “お金を払ってくれる” 法人向けにピボット(方向転換)。2012年12月には、企業内SNS「Yammer」やコラボレーションツール「SharePoint」などと連携した組織利用に最適化されたバージョンをリリースした。

リリース時点で、利用待ちだった企業の数は1,500社。4ヶ月強で50万件ほどの予約注文を獲得してポテンシャルが感じられたものの、ピボットするタイミングが遅すぎた…。この時点ですでに資金は底を尽き、サービスを閉鎖せざるを得なかった。

ユーザを裏切らないためにも最初から課金せよ

もし、Fludが最初からそのニュースリーダーを有料サービスにしていたらどうだったろう。またはフリーミアムにしていたら。もしかすると、違う結末が待っていたかもしれない。

Fludを含む完全に無料なサービスが陥る負の循環について、「Pinboard」の創業者 Maciej Cegłowski氏が”Don’t be a free user(ただ乗りユーザになるな)” というブログ記事に書いてる。

サービスの人気に火がつくと、買い手が寄ってくる。サービスを継続するための資金が底を尽いた創業者は、やむなくそれを売却する。「買い手がサービスを続けてくれるかも!?」という淡い期待はたいがい裏切られる。創業者はキャッシュアウトし、買い手はいいエンジニアを採用し、ただユーザだけがバカを見る。

いきなりサービス閉鎖の連絡を受けたユーザは驚くかもしれないけれど、考えてみれば、この結末はちっとも不思議なんかじゃない。むしろ、予測できたことのはず。だって、

サービスを完全に無料で提供するということは、新しくユーザが増えるたびに開発者のコストが上がり、サイトの人気が爆発しようものなら、それは彼らを破滅に落ち入れるから。

例えば、Fludの場合、法人サービスに力を入れ始めたタイミングで無料の消費者バージョンには数百万人のユーザがいたそう。無料バージョンというコストがあるため、法人サービスで稼ぎ出したとはいえ、最初からマイナスのスタートだった。

Cegłowski氏は、ユーザに対してこう呼びかけてる。

使い続けたいサービスがあって、そのサービスにビジネスモデルがないなら、課金するか広告を入れるかをして稼ぐよう、ひとりのユーザとして開発者の尻を叩こう。さもないと、ある日突然サービス終了の連絡を受けて嘆くことになる。

この負の循環を断つには、最初から課金するしかない(または他のビジネスモデルを導入すること)。それがユーザの課題を解決するサービスで、他にない価値を提供しているなら、ユーザは対価を支払ってくれるはず。無料でしか使われないのであれば、サービス自体に何らか問題があると考え直すべき。

マーク・アンドリーセン:”Raise Prices”

IT業界の重鎮が数多く登場するティム・フェリス(Tim Ferris)著の「Tools of Titans」に名を連ねるのが、マーク・アンドリーセン(Marc Andreessen)氏。ベンチャーキャピタル「アンドリーセン・ホロウィッツ」(Andreessen Horowitz)の共同創業者でゼネラルパートナー。

同氏は、スケールすることを優先して製品を安売りしてしまったばかりに、資金難に苦しむスタートアップが多すぎると指摘してる。要は、きちんと稼げと。

もし、どこかに大きなビルボード(看板)を設置できるとしたら、そこになんと書きますか?

という質問に対して、彼は “Raise Prices” と答えた。

企業が苦労する最大の理由のひとつは、自社製品を安売りしてしまうことだ。シリコンバレーでは、成功するためには価格を下げられるところまで下げるというのが常識になっている。低価格なら誰でも購入することができるため、数が集まるからだ。これで失敗する人が後を絶たない。

これをやってしまうと、”あまりにも空腹すぎて食べられない”という問題に直面する。製品を安売りしているために、”みんなに買ってもらう”ためのマーケティングや営業にお金をかけることができない。人がお金を払おうとしない製品は本当に良い製品だと言えるだろうか?(原著 P.171)

先行者利益:開拓者より移住者のメリットのほうが高い

ブックマークサービスは、最終的に後発のPinboardが老舗のDeliciousを買収するという結末に終わった。ガツッと一度に儲けることはなくても、ユーザが増えるたびに銀行にチャリンとお金が入る有料版が生き残った。

参照:「Deliciousさん、今度こそサヨナラ:Yahooに始まる5度の買収、長きにわたる大惨事から学ぶ

でも、スタートアップが失敗する要因がひとつに集約できないように、成功する要因もまたひとつではない。この2つのサービスの場合、一般的に言われる「先行者利益のメリット」の逆が働いたという見方もできる。

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Deliciousの創業は2003年、Pinboardはその6年後の2009年に創業してる。6年間のあいだ、Pinboardは、Delicious が先に市場を開拓し試行錯誤する姿を見続けた。そこからPinboardが学んだことは多かったはず。コピーキャットだと言われようと何だろうと、最後は生き残ったもん勝ちだもの。

実際、市場の”開拓者”より、それを後から真似た”移住者”のほうが事業の存続率や利益率が高いという調査結果があるそう。詳細は、アダム グラントさんの「ORIGINALS 誰もが「人と違うこと」ができる時代」を読んでみて。概要なら、TechCrunchが紹介してる。

開拓者と移住者って、兄弟に例えて考えるとわかりやすいかも。どんなことにも初めて挑戦しなきゃいけない長男や長女は失敗して痛い思いをする。でも、次女・次男は「あ、あれすると叱られるのね」ってな具合に、側で見ていることで学んで上手くやっていく。前述の調査では、利益率についても開拓者より移住者のほうが高いとあったけど、兄弟の場合はどうかしら…(笑)。

DeliciousとPinboardは結果的に移住者が成功したという一例だけれど、何でもかんでも先行者利益をゴリ押しするのは違うのかもしれない。考えてみれば、アップル(Apple)も、一番手に敢えてならず、後からより良い製品で対抗する戦略だわね。

サービスを長く使うことのハードルは上がるばかり

ソフトウェア開発のコストがどんどん下がって、新しいサービスが次々登場するようになった今、サービスを「ちょっと試してみる」ハードルはぐんと下がった。特にアプリなんて深く考えることなくダウンロードしちゃうから、スマホがアプリの墓場と化しているわけで…。

そのいっぽうで、ひとつのサービスを「使い続ける」ハードルはかなり上がってる。情報が絶えず飛び交うソーシャルメディアがわたしたちの注意力(attention span)を散漫にさせているように、サービスと根気よく付き合う忍耐力(patience)もまた下がっているからだと思う。

たしかに、使ったことも、使い込んだこともないサービスに最初から課金するハードルは高い。でも、ファーストフード店の安すぎる商品を「なんでそんなに安いの?」と疑ってしまうように、完全に無料のサービスは一時的に利用する分には良くても、コミットするのには躊躇してしまう。いつサービスが閉鎖しちゃうかわからないから、依存するのはこわいという感覚。

作り手は、これなら有料でも使うというサービスを目指すべきだし、またユーザは長く使いたいと思うサービスにはきちんと対価を支払う責任がある。私にとって、これはDropboxやTranscribe(テープ起こし)みたいなサービス。使う頻度は異なるけれど、どちらもなくなったら本当に困っちゃう。

皆さんは、どんなサービスを有料で使っていますか?使い続けていますか?


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