「働くことは自己実現ではなく他者実現」ーキャリアの歩み始めは “イエスマン”になろう

少し前に刺さる記事に遭遇した。

東洋経済の「来た球を「前倒し」で打つのが「仕事」」という記事。「働くこと」とはなんなのかを問う連載なんだそうで、今回はサイボウズの社長 青野慶久さんと明治大学文学部教授 齋藤孝さんとの対談でした。

サブタイトルには「これから社会に出る人のために」とあって、わたしは読者ターゲットとして完全に圏外なんだけれども、仕事を始めた頃の初心に帰らせてくれる素敵な内容だったの。

投資だった頃からNOと言えるまで

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先に進む前に、まずは自分の話をちょっと。わたしは、大学に在学中にインターンとして入った会社にそのまま就職して、その後数回転職をした後にフリーランスになったのが2002年頃。

フリーになりたての頃は仕事を選ばず、基本的にどんな仕事も受けていたと思う。ライターとしての実績はゼロだったし、まずはチャンスをもらってそれを次につなげたかったから。当時の仕事は、実績をつくるための「投資」だった。

そうしてしばらくすると、ありがたいことにいろいろな仕事をもらえるようになって実績ができてきた。指名してお仕事をいただける段階になると、リソースや内容を鑑みて何を受けて何を断るのかを判断する必要が出てきた。

ライティング業の叩き売りみたいな仕事はもちろんNOだし、自分の経験や専門分野にマッチしない、自分でなくてもいいだろうという案件も断ってきた。また、基本的に自分の名前を出す記名記事が大半だったから、掲載媒体の価値観に共感できないものなども断るように。

海を隔てたことを機会に立ち止まる

そんなこんなで仕事をお断りすることもある状態だったのが、東京からロサンゼルスに引っ越してきたことで変化を迎えた。

コラムや遠隔取材がOKな仕事は続けられたけれど、日本で取材先に出向いて対面で話を聞くことが求められる仕事を継続できなくなった。その他にもいろいろなことが重なって、仕事量があきらかに減った期間があった。

何かが起こるのには必ず理由があって、無駄なことなんてひとつもないというのが基本的なスタンス。だから、このちょっとした休息期間にもやっぱり理由があったんだと思う。

日本にいた頃は来るものに次々対応するだけでいっぱいいっぱいだったけれど、立ち止まって考えることができたから。あのまま日本にいたら、きっとこんな風に見直すことはなかったはず。

そんなタイミングだったからこそ、東洋経済の記事に書かれている「仕事に対する姿勢」の大切さを実感できたんだと思う。

働くことは自己実現ではなく他者実現

「スピード感」「相手に言われる前に動く」など記事で言及されているものは、どれも仕事をしていれば当然求められること。

それ以上に刺さったのが、働くということは「自己実現ではなく他者実現である」という話。

齋藤先生いわく、

私が考える働くことについての概念は「自己実現」より「他者実現」です。よく働くことについて、「自分のやりたいこと」を出発点として考える人が多いと思うのですが、むしろ、「やるべきことをやる」「求められていることをやる」というのが、仕事の出発点としては本質だと思います。

私も、自分のやりたいことをやりたいと思っていた時期は、人生が手詰まりな状態でした。自分がやりたいことだけをやっていると、自己の世界は拡がっていきません。むしろ、人が望んでいる願望や要望を満たしていくと、次のオファーがくる。それを断らないで、来た球をまた打つ。そうすると、自分でも思ってみないような仕事ができて、自分の幅も広がり、相手も喜んでくれる。それが循環を生む。仕事は基本的に循環しないといけないと思います。

すごく納得。一般的に、好きなことややりたいことを仕事にできるって素晴らしいね!と言われる。確かにそうかもしれないけれど、「自分がやりたいこと」を起点に考えてしまうと、結果的に自分の興味範囲のなかにとどまってしまう。

だから、自分がやりたいことを仕事にするだけじゃなく、相手に求められたことに応えていくことも大切。一言返事で受けないような仕事でも、それをやってみることで新しい発見があるかもしれないもの。

自分がやりたいこと以前に、今求められていることを、とりあえずやる。そうすると循環の中に入れて、仕事が増えていく。

駆け出しで仕事を選り好みするのはナンセンス

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わたしは、立ち止まる機会ができたことで改めてこれを実感したけれど、この姿勢は特にキャリアを歩み始めの頃にすごーく大事だと思う。

わたしが新卒で入社した会社はベンチャー企業だった。ベンチャーで働いてよかったと思うのは、ありとあらゆる仕事をやらせてもらえたこと。これもあれもとマルチロール&マルチタスクが当たり前だった。

カスタマーサポートや営業、マーケティング、プロジェクトマネージャー、ウェブディレクター、とにかく何でもやらせてもらえた。まずはYESと仕事を受けてみることで(人が足りないからNOという選択肢はそもそもないけれど…)、実際にやってみた上で向き不向きがわかる。

別の言い方をすると、やってみる前に仕事を選り好みするのはナンセンスだと思う。記事のなかで、青野さんもこうおっしゃってる。

これから社会に出て働こうという人にとって、自分の本当の強みはなかなかわからないものです。自分が思っている強みも、いざ社会に出てみると、意外にそうでもない場合が多い。実は別のところにあるかもしれない本当の強みこそ、この“代理力”で引き出せると思うのです。

頼まれたときに、向いてないなあと思っても、とりあえずやってみる。それが意外にうまくいくと、自分の強みを見つけられるし、もし成果が出なかったら、自分には向いていないと思えばいい。これを繰り返していると、本当の自分の強みがわかってきます。僕も過去を振り返ると、そうやってきたように思うんです。

考えずにひたずらYESマンになる

これまで何度も紹介しているテイモシー・フェリス(Tim Ferris)の書籍「Tools of Titans」から、関連するエピソードを紹介しようと思う。

「駆け出しの人へーーとにかくYESと言おう」というメッセージを贈るのは、CD Babyというサービスの創業者などとして知られるデリック・シルバーズ(Derek Silvers)氏。その内容は、要約するとこんな感じ。

18歳だった僕は、ボストンで音楽大学に通っていた。当時所属していたバンドのベースプレーヤーにこう言われた。「エージェントから連絡があって、バーモントの豚農場でイベントがあるらしい。ギャラは75ドル。俺はやらないけど興味ある?」。

「ギャラが出るって?もちろんやるよ!」と僕は一言返事で飛びついた。 バーモント州までの往復バスを58ドルで買った。農場に着くと、ギターを弾きながら豚のショーとやらを歩き回った。結局3時間くらい弾き続けた後、バスで帰路に着いた。

翌日になると、「昨日のショーは好評だったよ」とエージェントから電話があった。たった一回のこじんまりした豚のショーが、その後、さまざまなチャンスをもたらしてくれた。

キャリアを歩み始めの頃の最良の戦略は、”とにかく何事にもYESということ”だ。どんな小さな仕事にも、だ。どれが当たり券なのかはわからないのだから。